会長の長谷川さんから“命のビザ”を繋いだ大迫辰雄さんについて投稿いただきました。

甃会会長の長谷川和芳さん(1974年史学科卒、庭園班)から投稿いただきましたのでご紹介します。


<大迫辰雄さんのこと>

 

 皆さんのお手元に校友会から「あなたと青山学院」の最新号(35号)が届いているかと思いますが、その5ページに掲載されている“サーバント・リーダーのレジェンド”で大迫辰雄さんという方のお話が紹介されています。

 今から80年ほど前に、ヨーロッパで迫害を受けていたユダヤ人難民がシベリヤ・日本を経由してアメリカへ亡命するのですが、そのユダヤ人の渡航の一部をJTBが引き受け、添乗業務を大迫さんが担当されていたというお話です。

 大迫さんは1938年に青学英文科を卒業後、ジャパン・ツーリスト・ビューロー(現JTB)に入社、その後1940年頃に前述の業務に携わりました。

 

 私もJTBに勤めていましたが、大迫さんは年齢が35歳も離れた大先輩です。

 私が入社したのが1974年、大迫さんはその3年前に退職されましたので、本来出会う機会はなかったのですが、実は次のようなことからお会いしてお話しすることができました。

 今から35年ほど前です。

 その頃私は本社の総務部門に所属していた関係で、JTBのOB会の会合や懇親会に出席する機会があり、その際すでにOBとなっていた大迫さんとお話しする機会があったことを覚えています。

 大変物腰の柔らかい方で、私のような30代前半の若造にも敬語を使い穏やかな口調で、懇親会などでは他のOBと異なり口数は少なく、終始にこやかにしている紳士でした。

 残念ながら大迫さんとの会話の内容は全く思い出せませんし、大迫さんが現役の時にどんなお仕事をされたのか、といったお話もおそらくしていなかったと思います。

 

 実は私が、大迫さんが前述のようなユダヤ人難民の渡航に携わっていたことを知ったのは、今から5・6年前のことです。

 2015年に公開された唐沢寿明主演の映画「杉原千畝」を見て、ユダヤ人迫害の歴史への関心が高まり、その周辺について調べていく過程で、自分が勤務していたJTBも前述のような業務を任されていたことを知りました。

そこに出てくる大迫さんが、私が30年前にお話しした大迫さんとはすぐには結びつきませんでしたが、やがてそのことに気づき、更に大迫さんが青学の大先輩だとわかってたいへん驚くとともに妙な興奮を覚えました。

 戦前・戦中(第2次大戦)の出来事は、戦後生まれの私にとっては遠い歴史の中の世界だと思っていたのが、急に身近でほんの少し前の出来事のように思えたからです。

 ちなみに、映画「杉原千畝」のなかで大迫さんの役は濱田岳が演じていました。

 

 ユダヤ人迫害に関する歴史的事実は、そのどれもがやりきれない思いを抱く出来事です。以前から「シンドラーのリスト」や「アンネの日記」など断片的な知識はあったものの、最近、「映像の世紀」(NHK)などのドキュメンタリー番組で様々な背景を知れば知るほど深く考えさせられます。

 ユダヤ人迫害の最大悪はヒトラーでありナチスですが、実は香水で有名なココ・シャネルがナチスの協力者であったり、自動車王フォードをはじめアメリカの資本家がナチスの支援をしていたことなどを知り、まさに歴史は一面的に見ることができないという思いを強くしました。

 

 いずれにせよ、青学かつJTBの大先輩が、このような歴史の一コマに関わっていて、その大先輩と多少とも接点があったことは私にとって大変貴重な機会でした。

 

〔関係ページ〕

あなたと青山学院35号(電子ブック)

https://anagaku.meclib.jp/anagaku35/book/index.html#target/page_no=1

 

JTBの関連ページ

https://www.jtbcorp.jp/jp/colors/special/

あなたと青山学院35号

ユダヤ人難民渡航ルート(JTBホームページより)


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